Rocketlake (i7 11700K) のQSV
前回のベンチマーク記事では、i7 11700KのCPU性能を見ていったけど、今度はQSVはどうなっているの、ということでチェックした。
Kabylake(Skylake改1)からCometlake(同改4)まではずっと第9.5世代内蔵GPUが使いまわされてきたけど、Rocketlakeではやっとのことで内蔵GPUの世代も更新されて、第12世代に更新された。コア自体は10nmのTigerlakeの移植ということで、QSVの世代もこれに準じるものとなっていて、画質面は期待できそう。
一方、EU数はTigerlakeの96EUに対して、わずか32EUの実装になっている。まあ、やはり14nmでは数を詰め込めなかった、ということなのだろうか。
比較環境
比較したのは以下の環境。基本的にRocketlake以外のデータは去年のデータ(1)(2)と同じなので、いまとなっては古い環境もある。
使用ソフト
x264 r2988 x64
x265 3.3+2 x64
NVEncC 4.68 x64
QSVEncC 3.33 x64
QSVEncC 5.00β2 x64 (RKLのみ)
VCEEncC 5.04 x64
入力 (実写)
sample_movie_1080p.mpg
MPEG2 1920x1080 29.97fps 5203frame
入力 (アニメ)
sakura_op.mpg
MPEG1 1280x720 30fps 3501frame
使用コマンド
QSVEnc/NVEncについては、おそらく画質が一番高くなるであろうオプションを試した。x264/x265はきりがないのでpresetをそのまま使用している。
なお、x264/x265では、今回入れてない--tune ssimを入れてssimに最適化したエンコをすることでさらにssim的には改善の余地があることに注意。
x264 medium
--crf
x264 veryslow
--crf --preset veryslow
x265 medium
--crf
x265 veryslow
--crf --preset veryslow
x265 medium 10bit
--crf --input-depth 10 --output-depth 10
x265 veryslow 10bit
--crf --input-depth 10 --output-depth 10 --preset veryslow
nvenc H.264
--vbrhq 0 --vbr-quality --preset quality --weightp --bref-mode each --lookahead 32 --level 5.2
nvenc HEVC
--vbrhq 0 --vbr-quality --preset quality --weightp --bref-mode each --lookahead 32 -c hevc --level 6
nvenc HEVC 10bit
--vbrhq 0 --vbr-quality --preset quality --weightp --bref-mode each --lookahead 32 -c hevc --level 6 --output-depth 10
nvenc HEVC + Bframes
--vbrhq 0 --vbr-quality --preset quality --weightp --bref-mode each --lookahead 32 -c hevc --level 6 -b 3
nvenc HEVC 10bit + Bframes
--vbrhq 0 --vbr-quality --preset quality --weightp --bref-mode each --lookahead 32 -c hevc --level 6 --output-depth 10 -b 3
qsv H.264
--la-icq --la-depth 60 -u 1
qsv HEVC
--icq -u 1 -c hevc
qsv HEVC 10bit
--icq -u 1 -c hevc --profile main10 --output-depth 10
vce H.264
--cqp:+2:+5 -u slow
--vbr -u slow
vce HEVC
--cqp:+2:> -u slow -c hevc
--vbr -u slow -c hevc
エンコード速度
まずは1080pのエンコード速度から。対象は実写のMPEG2 1920x1080 29.97fps 5203frame。

Rocketlake(RKL)のQSVは、Kabylakeと比べるとH.264は遅くなっている一方、HEVCは速くなっている。
一方、Icelakeとの比較では、HEVCのslowはIcelakeより速いけど、mediumのほうは遅い。Rocketlakeは32EUで、Icelakeは64EUなので、もしかして結構遅くなったりするのかと思っていたけど、そんなことはなく、まあだいたい同じくらいみたいで安心した。
まあとりたてて速いわけでもないけど、そこそこの速度でエンコードできるようだ。
画質比較 (実写 1080p : SSIM)
縦軸SSIM:Allが高いほど画質がよく、横軸ビットレートが小さいほど圧縮できているので、左上にいればいるほど良いことになる。まあ、SSIMで画質を比べることについてもいろいろあるけど、たくさんのデータをグラフにするにはそのぐらいしかないので。
VMAFはもっと速く計算できるようになるまではやらないです。
まずはQSV同士の比較から。
クリックで拡大

QSVはIcelake世代で大幅に圧縮比が向上し、高画質・高圧縮になったが、RocketlakeはIcelakeの線とほぼ重なっていて、同じぐらいのエンジンが実装されていることがわかる。CometlakeまでのデスクトップCPUには、ずっとKabylake世代のQSVが積まれていたので、デスクトップCPUとしては待ちに待った更新になっている。
一方で、Icelakeとほぼ同じということで、Icelake→Rocketlakeでは画質面での向上はないようだ(Rocketlake固有のオプション等を使えば別なのかもだが)
他のGPUやx264/x265と比較するとこんな感じ。
クリックで拡大

NVEncのほうはQSVより大幅に速いが、一方でQSVのほうが画質面ではよさそう。
RocketlakeのQSVのHEVCはSSIMベースでは、x265のmedium程度の画質はあるみたいで、GPUのEUを演算に活用するHybrid型とはいえ、ソフトウェアエンコに迫っているということでなかなかすごいことだと思う。
画質比較 (アニメ 720p : SSIM)
圧縮しやすいアニメ映像だとまた傾向が変わることもあるので確認してみた。
まずはQSV同士の比較から。
クリックで拡大

これは傾向は変わらず、RocketlakeはKabylakeから大幅に性能が向上し、こちらではIcelakeとの比較でもごくわずかに良くなっているように見える。
クリックで拡大

アニメ絵に関してはやはりソフトウェアエンコのほうが高画質・高圧縮を達成できるようで、x265とはそれなりの差がある。NVEncとの差も少し縮んでいる。
画質・圧縮率の高いHWエンコをデスクトップにもたらしたRocketlake
Icelakeの登場からだいぶたってしまったが、Rocketlakeの登場によりKabylake世代のQSVで停滞していたデスクトップCPUにやっと新世代のQSVがもたらされた。
NVEncのように非常に高速というわけではないが、IcelakeのQSV同様にそこそこの速度でHWエンコとしては画質・圧縮率の高いHWエンコとなっていると思う。ソフトウェアエンコには及ばずとも比較できる範囲内に入ってきているのはなかなかすごいことだと思う。
ただ、やはりベンチマークでも書いたようにZen3に対してRocketlakeはCPU性能が劣勢で、値段も特に安くなく、消費電力はかなり高いので、わざわざRocketlakeを選ぶのか、というのが難点。
また、逆にQSV目当てでローエンドあたりを狙うとしても、今回のRocketlakeのラインアップにはCore i3以下がなく、そして微妙にアイドル電力も高い(らしい)というのもローエンドとしては気になるところになってしまっている。
QSVEncの開発がはかどる
Rocketlake/TigerlakeのQSVには、今回チェックした既存のエンコード機能のほかに、HEVC YUV422/YUV444エンコードやAV1 HWデコードなども追加されている。
QSVEncでは5.00beta1からこのあたりの機能への対応も進めていて、今回実機が手に入ったのでこのあたりがちゃんと使えるように実装していきたい。
やはり実機があって動くと実装作業も楽しくなってくる。
IntelがRocketlakeで無理して14nmへの逆移植に挑戦してくれたおかげで、Alderlakeまで待たずとも最新世代のQSV環境と高IPCでレスポンスのよい開発環境が手に入ったので、とても個人的な理由だけど、わりとありがたかった。
Kabylake(Skylake改1)からCometlake(同改4)まではずっと第9.5世代内蔵GPUが使いまわされてきたけど、Rocketlakeではやっとのことで内蔵GPUの世代も更新されて、第12世代に更新された。コア自体は10nmのTigerlakeの移植ということで、QSVの世代もこれに準じるものとなっていて、画質面は期待できそう。
一方、EU数はTigerlakeの96EUに対して、わずか32EUの実装になっている。まあ、やはり14nmでは数を詰め込めなかった、ということなのだろうか。
内蔵GPU | 代表的なCPU |
---|---|
第7.5世代 | Haswell (HSW) |
第8世代 | Broadwell (BDW) |
第9世代 | Skylake (SKL) |
第9.5世代 | Kabylake (KBL) Coffelake Cometlake |
第10世代 | 幻のCannonlake (CNL) |
第11世代 | Icelake (ICL) |
第12世代 | Tigerlake (TGL) Rocketlake (RKL) |
比較環境
比較したのは以下の環境。基本的にRocketlake以外のデータは去年のデータ(1)(2)と同じなので、いまとなっては古い環境もある。
x264 x265 | nvenc (1060) | nvenc (2070) | QSV (HSW) | QSV (KBL) | QSV (ICL) | QSV (RKL) | vce (Vega) | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
CPU | i9 7980XE | i3 4170 | i7 7700K | i5 1035G7 | i7 11700K | R3 3200G | ||
GPU | - | GTX 1060 | RTX 2070 | HDG 4400 | HDG 630 | Iris Plus | HDG 750 | Vega8 |
ドライバ | 442.19 | 5058 | 7870 | 7641 | 9127 | 20.2.1 | ||
OS | Win10 x64 |
使用ソフト
x264 r2988 x64
x265 3.3+2 x64
NVEncC 4.68 x64
QSVEncC 3.33 x64
QSVEncC 5.00β2 x64 (RKLのみ)
VCEEncC 5.04 x64
入力 (実写)
sample_movie_1080p.mpg
MPEG2 1920x1080 29.97fps 5203frame
入力 (アニメ)
sakura_op.mpg
MPEG1 1280x720 30fps 3501frame
使用コマンド
QSVEnc/NVEncについては、おそらく画質が一番高くなるであろうオプションを試した。x264/x265はきりがないのでpresetをそのまま使用している。
なお、x264/x265では、今回入れてない--tune ssimを入れてssimに最適化したエンコをすることでさらにssim的には改善の余地があることに注意。
x264 medium
--crf
x264 veryslow
--crf
x265 medium
--crf
x265 veryslow
--crf
x265 medium 10bit
--crf
x265 veryslow 10bit
--crf
nvenc H.264
--vbrhq 0 --vbr-quality
nvenc HEVC
--vbrhq 0 --vbr-quality
nvenc HEVC 10bit
--vbrhq 0 --vbr-quality
nvenc HEVC + Bframes
--vbrhq 0 --vbr-quality
nvenc HEVC 10bit + Bframes
--vbrhq 0 --vbr-quality
qsv H.264
--la-icq
qsv HEVC
--icq
qsv HEVC 10bit
--icq
vce H.264
--cqp
--vbr
vce HEVC
--cqp
--vbr
エンコード速度
まずは1080pのエンコード速度から。対象は実写のMPEG2 1920x1080 29.97fps 5203frame。

Rocketlake(RKL)のQSVは、Kabylakeと比べるとH.264は遅くなっている一方、HEVCは速くなっている。
一方、Icelakeとの比較では、HEVCのslowはIcelakeより速いけど、mediumのほうは遅い。Rocketlakeは32EUで、Icelakeは64EUなので、もしかして結構遅くなったりするのかと思っていたけど、そんなことはなく、まあだいたい同じくらいみたいで安心した。
まあとりたてて速いわけでもないけど、そこそこの速度でエンコードできるようだ。
画質比較 (実写 1080p : SSIM)
縦軸SSIM:Allが高いほど画質がよく、横軸ビットレートが小さいほど圧縮できているので、左上にいればいるほど良いことになる。まあ、SSIMで画質を比べることについてもいろいろあるけど、たくさんのデータをグラフにするにはそのぐらいしかないので。
VMAFはもっと速く計算できるようになるまではやらないです。
まずはQSV同士の比較から。
クリックで拡大

QSVはIcelake世代で大幅に圧縮比が向上し、高画質・高圧縮になったが、RocketlakeはIcelakeの線とほぼ重なっていて、同じぐらいのエンジンが実装されていることがわかる。CometlakeまでのデスクトップCPUには、ずっとKabylake世代のQSVが積まれていたので、デスクトップCPUとしては待ちに待った更新になっている。
一方で、Icelakeとほぼ同じということで、Icelake→Rocketlakeでは画質面での向上はないようだ(Rocketlake固有のオプション等を使えば別なのかもだが)
他のGPUやx264/x265と比較するとこんな感じ。
クリックで拡大

NVEncのほうはQSVより大幅に速いが、一方でQSVのほうが画質面ではよさそう。
RocketlakeのQSVのHEVCはSSIMベースでは、x265のmedium程度の画質はあるみたいで、GPUのEUを演算に活用するHybrid型とはいえ、ソフトウェアエンコに迫っているということでなかなかすごいことだと思う。
画質比較 (アニメ 720p : SSIM)
圧縮しやすいアニメ映像だとまた傾向が変わることもあるので確認してみた。
まずはQSV同士の比較から。
クリックで拡大

これは傾向は変わらず、RocketlakeはKabylakeから大幅に性能が向上し、こちらではIcelakeとの比較でもごくわずかに良くなっているように見える。
クリックで拡大

アニメ絵に関してはやはりソフトウェアエンコのほうが高画質・高圧縮を達成できるようで、x265とはそれなりの差がある。NVEncとの差も少し縮んでいる。
画質・圧縮率の高いHWエンコをデスクトップにもたらしたRocketlake
Icelakeの登場からだいぶたってしまったが、Rocketlakeの登場によりKabylake世代のQSVで停滞していたデスクトップCPUにやっと新世代のQSVがもたらされた。
NVEncのように非常に高速というわけではないが、IcelakeのQSV同様にそこそこの速度でHWエンコとしては画質・圧縮率の高いHWエンコとなっていると思う。ソフトウェアエンコには及ばずとも比較できる範囲内に入ってきているのはなかなかすごいことだと思う。
ただ、やはりベンチマークでも書いたようにZen3に対してRocketlakeはCPU性能が劣勢で、値段も特に安くなく、消費電力はかなり高いので、わざわざRocketlakeを選ぶのか、というのが難点。
また、逆にQSV目当てでローエンドあたりを狙うとしても、今回のRocketlakeのラインアップにはCore i3以下がなく、そして微妙にアイドル電力も高い(らしい)というのもローエンドとしては気になるところになってしまっている。
QSVEncの開発がはかどる
Rocketlake/TigerlakeのQSVには、今回チェックした既存のエンコード機能のほかに、HEVC YUV422/YUV444エンコードやAV1 HWデコードなども追加されている。
QSVEncでは5.00beta1からこのあたりの機能への対応も進めていて、今回実機が手に入ったのでこのあたりがちゃんと使えるように実装していきたい。
やはり実機があって動くと実装作業も楽しくなってくる。
IntelがRocketlakeで無理して14nmへの逆移植に挑戦してくれたおかげで、Alderlakeまで待たずとも最新世代のQSV環境と高IPCでレスポンスのよい開発環境が手に入ったので、とても個人的な理由だけど、わりとありがたかった。
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