Rocketlake (i7 11700K) ベンチマーク
Rocketlakeでは、デスクトップで5年もの間続いたSkylakeにやっと別れを告げた。
大変、喜ばしい。
Rocketlakeでは10nm向けSunnyCoveコアを14nmに逆移植することによりコアを刷新して、IPCが大きく向上している。
一方で、コアの刷新とAVX512等の追加ユニットによってコア面積が増加している。加えてGPUのEU数増加(24EU→32EU)、PCIe Gen4対応なども行った影響でチップの大型化が避けられず、そのためか前の世代の最上位(10900K=10コア)から最大コア数が2コア減ってしまっている。それでもなお、10900Kからダイサイズは大きく増えているらしい。
このRocketlakeの性能がどんなものなのか、ベンチマークでこの前ゲットした11700KとAMD 8コアCPUと比べてみた。本当は10700Kとも比較できると面白かったのだが、残念ながら持っていないのでその比較はできず。
なお、今回置く場所の関係で、11700KをMini ITXの比較的小さなケースに押し込んでいる(詳細はこちら)ので、CPU温度とかについては、ちょっと熱くなりやすい環境になっていることに注意して欲しい。

比較環境
比較したCPUは11700KとR7 5800X(偽)、R7 3700X。
R7 5800X(偽) は、R7 5800Xを持っていないので、R9 5950Xを半分無効にして5800Xをでっちあげたもの。
↓ 5800X(偽) のタスクマネージャ表示。8コアCPUだ。

i7 11700Kを載せているZ590I AORUS ULTRAのBIOSは2021/03/25のF5aに更新した。
細かい設定等を表にまとめるとこんな感じ。BIOSの設定では、メモリはGear1のDDR4-3600、AVX512 Offsetは明示的に無効にした。
そして、Power Limit(PL)を11700Kの標準とされている値で有効にした(PL1:125W、PL2:251W、56秒)場合と、無効にした場合(Unlimited)の2種類で比較した。
Unlimitedでは、PL1/PL2に加え、電流に関する上限(IccMAX)もBIOSから明示的に開放して、全コアTurboの上限(4.6GHz)に張り付くようにした。
ちなみに、11700Kのデフォルトの動作クロックを11900Kと比べると、下のようになっていて、11700Kの全コアTurboは4.6GHzになっていて、11900Kより0.2GHz低い。
11900Kは、さらにAdaptive Boost Technology(ABT)を有効にすると、熱と電力の許す限り5.1GHzで動作するらしい。
熱と電力の許す限り…。(正直これがRocketlakeの爆熱の噂の原因な気がする…)
使用ソフト
Cinebench R15, R20, R23
7zip 19.00
Aviutl 1.00 / x264guiEx 2.65 / x265guiEx 3.101 / svtav1guiEx 0.04
x264 rev3027 x64
x265 3.4+28 x64
ちょっと古いものもあるけど、今回はRyzen 5950Xのベンチマークの時のデータと比較するため、当時の同じバージョンを使用。5800X(偽)/5700Xのデータは取り直しておらず、前回のをそのまま流用している。
Cinebench R15
シングルスレッドは247で、Skylake系コアはたいてい215とかその程度なので前の世代と比べると大きく改善しているはずなのだが、それでもZen3には勝てず、という結果に。マルチスレッドでも同様の差が見えていて、なかなか厳しい結果に。

Unlimitedにしてもスコアが変わらないのは、PL2の持続時間(56秒)以内に終了してしまうベンチマークなため。これはR20、R23でも同じ。
Cinebench R20
これもR15とほぼ同じ。シングル600越えはすごい、はずなのだが、Zen3には勝てず。シングルではあとちょっとだが、マルチでは差が広がっている。

Cinebench R23
やはりZen3には勝てず。傾向もR20とほぼ変わらない。このベンチマークもやはり1回だとPL2の持続時間内にぎりぎり終わるか終わらないかぐらいなので、今後は新たに追加された10分継続するテストのほうをしてみたほうが良いのかもしれない。

7zip benchmark
このベンチマークはZen2→Zen3での伸びがすごく大きかったベンチマーク。11700Kは3700Xとほぼ同じという、振るわない結果に。
というかZen3はなぜこんなに速いのだろうか。32MBになったL3とかが効いている?

x264 rev3027 x64
さて、ここからが本題。
Aviutlでmpeg2 1080p 5203frame(sample_movie_1080p.mpg)をlwinput.auiで読み込み、x264guiExで出力。
オプション: --preset

11700KはPower Limitありだと2割ほど5800X(偽)に引き離されていて、Unlimitedにしてやっと1割ほどの差に迫れる感じ。まあ、5800X(偽)もPPTを上げればもっと上がるわけだが…。
x265 3.4+28 x64
Aviutlでmpeg2 1080p 5203frame(sample_movie_1080p.mpg)をlwinput.auiで読み込み、x265guiExで出力。
オプション: --crf 21 --output-depth 8/10 --preset (--asm avx512)
11700Kでは、--asm AVX512をつけて強制的にAVX512を有効とした。また、AVX512 Offsetは表にも書いたように、BIOSから明示的にOffset=0と無効化した。
まず8bitから。こちらはx264よりは11700Kが善戦している感じがする。

10bitも同様で、善戦はしている。Unlimitedにすれば5800X(偽)に食らいついていけるが、まだちょっと足りない…というところ。

じゃあUnlimitedとした時とPower Limitの制限をかけた時で、どのくらい温度やPackage Powerが違うのか、というのを確認してみた。先ほどのx265 10bitエンコードの--preset slowerのときの約40分間のエンコードで、HWiNFOでログをとって確認した。
まずCPU Package Power(←左軸)とそのときの動作周波数(右軸→)から。

Unlimitedとした時はクロックは4.6GHzでほぼ安定していて、そのときCPU Package Powerは190W前後で最大203Wになっている。
逆にPower limitをかけたときは、エンコード開始後約1分で Package Powerが125W前後をうろつくようになり、クロックは4.1GHz前後をうろうろしている。Power Limitの影響で500MHz前後下がっていて、かなり影響は大きい。
今度はそのときの温度の比較。CPUコア温度の最大値と、マザーの電源の温度(VR VCC)をUnlimitedとした時とPower Limitの制限の時で比較。

Power limitをかけたときはCPUコア温度が時折82~83℃になるぐらいで基本は70℃前後と十分冷えている。
Unlimitedとした時はCPU温度は時間とともに少しずつ上がり続けて最大92℃となっていてかなり高め。マザーボードの電源回路(VR VCC)の温度もじわじわ上がり続け、68℃まであがっていった。じりじりと温度が上がっていってしまうのは、CPUの問題というよりはケースの冷却が間に合っていないのが原因。
やはり排気ファンが1基しかつけられないEvolve Shift Xの排気効率が悪く、いわゆる窒息ケース状態でケース全体がどんどん温まってしまっているし、その結果ケース内のラジエータ自体もどんどん温まって通過した空気からは温風が出るようになってしまっている。
こういう場合は簡易水冷のファンを逆向きに排気でつけられればまた少しは違うかもなのだが、このケースではいわゆる煙突ケースなので、これを活かして上向きに排気しようとすると基本的にラジエータは吸気でつけるしかなく、難しいところ。
噂通り「Rocketlakeは爆熱」なのか、というと個人的には今回91℃までいってしまったのは単にこのケースに無理やり押し込んでいるから、という印象で、普通のミドルタワーのケースと280mm簡易水冷なら11700KはUnlimitedでもいけるのでは、という気がする。
増えてしまったアイドル電力?
若干気になるのは、今回アイドル時電力が増えているらしい点。自分では電力測定は行っていない(というかその機材もない)のでよくわからないが、たしかにHWiNFO読みだとアイドル時も15W前後消費しているように見える。

特に"SystemAgent"と"Rest of the chips"が全く下がらず、Minimumでもそれぞれ8.2W、6.1Wとなっている。PCIe Gen4対応などのせいなのか、あるいはBIOS設定の見直しで改善するのかもしれないが…?
10nmのSunnyCoveを14nmに移植したRocketlakeだけど、これでシングルスレッド性能はかなり改善しているのは間違いない。11700Kでは、まだZen3に及ばずといったところだが、最大5.3GHzまで上昇する11900Kでは、Zen3を上回る結果になっているようだ。Zen3の登場ででかなり引き離されてしまったシングルスレッド性能で追いつくという最大の目的(?)はある程度達成できているように思う。
シングルスレッド性能はやはりCPU性能の根幹なので、ここでSunnyCoveコアが(11900Kなら)Zen3と「戦える」ことを示したのは意義があるし、今後のWillowCove、GoldenCoveにも期待したい。
ただ、やはり10nm向けのSunnycoveを14nmに持ってこざるを得なかった代償は大きく、それがマルチスレッド性能に表れていると思う。そもそも前世代の最上位からコア数が減ってしまっているし(10コア→8コア)、またそれでも高クロックで回すには消費電力が多すぎてPower Limitありの状況ではクロックが下がらざるを得ず、性能が上がりづらくなってしまい、Ryzen7 5800X(偽)に引き離されてしまうという状況はかなり厳しい。
頼みのシングルスレッド性能も、Zen3と同等程度でしかないので、あえてRyzen7 5800XでなくてRocketlakeを買う理由は、iGPUがついているとか、QSVが使えるとか、あとは入手難易度とかを除けばどうなんだろう、と思ってしまう。
一方で、Rocketlakeは爆熱という噂を散々聞いていたので身構えていたけど、今回使った11700Kに関しては拍子抜けだった。Power Limit(PL1=125W)をかければ、当然おとなしいし、x265エンコードでPower LimitをしなくてもPackage Powerが最大でも200Wなので、たしかにかなり熱いけど簡易水冷なら普通に冷やせる程度。まあ、i9 7980XEとかRyzen9 5950Xとかで遊んできたせいで、自分の感覚がマヒしている感は否めないし、8コアで200Wというのはたしかにすさまじいけど。
まあいわゆる「爆熱100℃突破レビュー」をよく見返すと、11900KでABT使用時だったり、あるいは11700KでもAVX512を駆使するベンチマークとかでヤバくなっている感じ。11900KでPower limitを外してABTを有効にすると高電圧の必要な5.1GHzで全コアぶん回すのでヤバい、という話なのだろうと思う。
そういう意味では、11900KのABTは公式限界OCに限りなく近く、そこまでやって性能をアピールせざるを得ないほど追い詰められている、ということになるのだと思う。11900Kを買ってもその性能を引き出すには相当頑張って冷却する必要がありそうなので、個人的には、11700K(あるいは11700無印とか)で自分の環境に合わせてPower Limitを設定するのが扱いやすいし、値段も抑えられるし、いいんじゃないかと思う。
個人的にはもうSkylake改コアはもういいよという感じだったので、Rocketlakeで逆移植に挑戦してくれただけでも楽しめたし、特にiGPUが第12世代に更新されていることもあって、「最新のQSVに対応した、シングルスレッド性能の向上した開発環境」が新たに入手できたのは大変ありがたかった。これで「QSVEncにTigerlakeの~~という機能を追加してください」とか言われても困らないのだ。
…やっぱりUnlimitedにするとファンがうるさいので、PL1=150Wぐらいで使おうかなあ…
Rocketlakeの注目ポイントは、CPUコアの刷新のほかに、GPUコアの刷新というのもあって、Tigerlakeと同じ第12世代のGPUが載っている。
このQSVがどんなもんかな、というのを次回見てみたい。
大変、喜ばしい。
Rocketlakeでは10nm向けSunnyCoveコアを14nmに逆移植することによりコアを刷新して、IPCが大きく向上している。
一方で、コアの刷新とAVX512等の追加ユニットによってコア面積が増加している。加えてGPUのEU数増加(24EU→32EU)、PCIe Gen4対応なども行った影響でチップの大型化が避けられず、そのためか前の世代の最上位(10900K=10コア)から最大コア数が2コア減ってしまっている。それでもなお、10900Kからダイサイズは大きく増えているらしい。
このRocketlakeの性能がどんなものなのか、ベンチマークでこの前ゲットした11700KとAMD 8コアCPUと比べてみた。本当は10700Kとも比較できると面白かったのだが、残念ながら持っていないのでその比較はできず。
なお、今回置く場所の関係で、11700KをMini ITXの比較的小さなケースに押し込んでいる(詳細はこちら)ので、CPU温度とかについては、ちょっと熱くなりやすい環境になっていることに注意して欲しい。

比較環境
比較したCPUは11700KとR7 5800X(偽)、R7 3700X。
i7 11700K | |
---|---|
![]() |
Ryzen7 5800X(偽) | Ryzen7 3700X |
---|---|
![]() | ![]() |
R7 5800X(偽) は、R7 5800Xを持っていないので、R9 5950Xを半分無効にして5800Xをでっちあげたもの。
↓ 5800X(偽) のタスクマネージャ表示。8コアCPUだ。

i7 11700Kを載せているZ590I AORUS ULTRAのBIOSは2021/03/25のF5aに更新した。
細かい設定等を表にまとめるとこんな感じ。BIOSの設定では、メモリはGear1のDDR4-3600、AVX512 Offsetは明示的に無効にした。
そして、Power Limit(PL)を11700Kの標準とされている値で有効にした(PL1:125W、PL2:251W、56秒)場合と、無効にした場合(Unlimited)の2種類で比較した。
Unlimitedでは、PL1/PL2に加え、電流に関する上限(IccMAX)もBIOSから明示的に開放して、全コアTurboの上限(4.6GHz)に張り付くようにした。
CPU | i7 11700K 0x34 | R7 5800X(偽) | R7 3700X | |
---|---|---|---|---|
PL1:125 / PL2:251 | Unlimited | 定格 | 定格 | |
コア数 | 8C/16T | 8C/16T | 8C/16T | |
L2 Cache | 4MB | 4MB | 4MB | |
L3 Cache | 16MB | 32MB | 32MB | |
AVX512 | Offset=0 | - | - | |
Core Voltage | Auto | Auto | Auto | |
PPT/PL1 | 125W | Unlimited | 142W | 88W |
PL2 | 251W (56sec) | |||
IccMax | Auto | |||
TDC | 95A | 60A | ||
EDC | 140A | 90A | ||
Uncore | 4100MHz | 1800MHz | 1800MHz | |
メモリ | DDR4-3600 2ch | DDR4-3600 2ch | DDR4-3600 2ch | |
メモリ容量 | 16GB | 32GB | 16GB | |
タイミング | 18-22-22-45-2 | 19-20-20-40-1 | 20-23-23-45-1 | |
メモリ FCLK | 1:1 (Gear1) | 1:1 | 1:1 | |
マザー | Gigabyte Z590I AORUS ULTRA (F5a) | Gigabyte B550 AORUS Master | Asrock X570 Steel Legend | |
冷却 | Thermaltake Water 3.0 Riing Edition 280 | Fractal Design Celsius+ S28 Prisma | Noctua NH-D14 | |
電源 | Seasonic SS-620GB | Seasonic FOCUS PX-750 | ENERMAX EPM600AWT | |
ケース | Phanteks Evolv Shift X | Fractal Design Define 7 Compact LightTG | Antec P100 |
ちなみに、11700Kのデフォルトの動作クロックを11900Kと比べると、下のようになっていて、11700Kの全コアTurboは4.6GHzになっていて、11900Kより0.2GHz低い。
11900Kは、さらにAdaptive Boost Technology(ABT)を有効にすると、熱と電力の許す限り5.1GHzで動作するらしい。
熱と電力の許す限り…。
~2コア | ~4コア | ~6コア | ~8コア | |
---|---|---|---|---|
11700K | 5.0GHz | 4.9GHz | 4.7GHz | 4.6GHz |
11900K | 5.3GHz | 5.1GHz | 4.9GHz | 4.8GHz |
11900K ABT | 5.3GHz | 5.1GHz |
使用ソフト
Cinebench R15, R20, R23
7zip 19.00
Aviutl 1.00 / x264guiEx 2.65 / x265guiEx 3.101 / svtav1guiEx 0.04
x264 rev3027 x64
x265 3.4+28 x64
ちょっと古いものもあるけど、今回はRyzen 5950Xのベンチマークの時のデータと比較するため、当時の同じバージョンを使用。5800X(偽)/5700Xのデータは取り直しておらず、前回のをそのまま流用している。
Cinebench R15
シングルスレッドは247で、Skylake系コアはたいてい215とかその程度なので前の世代と比べると大きく改善しているはずなのだが、それでもZen3には勝てず、という結果に。マルチスレッドでも同様の差が見えていて、なかなか厳しい結果に。

Unlimitedにしてもスコアが変わらないのは、PL2の持続時間(56秒)以内に終了してしまうベンチマークなため。これはR20、R23でも同じ。
Cinebench R20
これもR15とほぼ同じ。シングル600越えはすごい、はずなのだが、Zen3には勝てず。シングルではあとちょっとだが、マルチでは差が広がっている。

Cinebench R23
やはりZen3には勝てず。傾向もR20とほぼ変わらない。このベンチマークもやはり1回だとPL2の持続時間内にぎりぎり終わるか終わらないかぐらいなので、今後は新たに追加された10分継続するテストのほうをしてみたほうが良いのかもしれない。

7zip benchmark
このベンチマークはZen2→Zen3での伸びがすごく大きかったベンチマーク。11700Kは3700Xとほぼ同じという、振るわない結果に。
というかZen3はなぜこんなに速いのだろうか。32MBになったL3とかが効いている?

x264 rev3027 x64
さて、ここからが本題。
Aviutlでmpeg2 1080p 5203frame(sample_movie_1080p.mpg)をlwinput.auiで読み込み、x264guiExで出力。
オプション: --preset

11700KはPower Limitありだと2割ほど5800X(偽)に引き離されていて、Unlimitedにしてやっと1割ほどの差に迫れる感じ。まあ、5800X(偽)もPPTを上げればもっと上がるわけだが…。
x265 3.4+28 x64
Aviutlでmpeg2 1080p 5203frame(sample_movie_1080p.mpg)をlwinput.auiで読み込み、x265guiExで出力。
オプション: --crf 21 --output-depth 8/10 --preset
11700Kでは、--asm AVX512をつけて強制的にAVX512を有効とした。また、AVX512 Offsetは表にも書いたように、BIOSから明示的にOffset=0と無効化した。
まず8bitから。こちらはx264よりは11700Kが善戦している感じがする。

10bitも同様で、善戦はしている。Unlimitedにすれば5800X(偽)に食らいついていけるが、まだちょっと足りない…というところ。

じゃあUnlimitedとした時とPower Limitの制限をかけた時で、どのくらい温度やPackage Powerが違うのか、というのを確認してみた。先ほどのx265 10bitエンコードの--preset slowerのときの約40分間のエンコードで、HWiNFOでログをとって確認した。
まずCPU Package Power(←左軸)とそのときの動作周波数(右軸→)から。

Unlimitedとした時はクロックは4.6GHzでほぼ安定していて、そのときCPU Package Powerは190W前後で最大203Wになっている。
逆にPower limitをかけたときは、エンコード開始後約1分で Package Powerが125W前後をうろつくようになり、クロックは4.1GHz前後をうろうろしている。Power Limitの影響で500MHz前後下がっていて、かなり影響は大きい。
今度はそのときの温度の比較。CPUコア温度の最大値と、マザーの電源の温度(VR VCC)をUnlimitedとした時とPower Limitの制限の時で比較。

Power limitをかけたときはCPUコア温度が時折82~83℃になるぐらいで基本は70℃前後と十分冷えている。
Unlimitedとした時はCPU温度は時間とともに少しずつ上がり続けて最大92℃となっていてかなり高め。マザーボードの電源回路(VR VCC)の温度もじわじわ上がり続け、68℃まであがっていった。じりじりと温度が上がっていってしまうのは、CPUの問題というよりはケースの冷却が間に合っていないのが原因。
やはり排気ファンが1基しかつけられないEvolve Shift Xの排気効率が悪く、いわゆる窒息ケース状態でケース全体がどんどん温まってしまっているし、その結果ケース内のラジエータ自体もどんどん温まって通過した空気からは温風が出るようになってしまっている。
こういう場合は簡易水冷のファンを逆向きに排気でつけられればまた少しは違うかもなのだが、このケースではいわゆる煙突ケースなので、これを活かして上向きに排気しようとすると基本的にラジエータは吸気でつけるしかなく、難しいところ。
噂通り「Rocketlakeは爆熱」なのか、というと個人的には今回91℃までいってしまったのは単にこのケースに無理やり押し込んでいるから、という印象で、普通のミドルタワーのケースと280mm簡易水冷なら11700KはUnlimitedでもいけるのでは、という気がする。
増えてしまったアイドル電力?
若干気になるのは、今回アイドル時電力が増えているらしい点。自分では電力測定は行っていない(というかその機材もない)のでよくわからないが、たしかにHWiNFO読みだとアイドル時も15W前後消費しているように見える。

特に"SystemAgent"と"Rest of the chips"が全く下がらず、Minimumでもそれぞれ8.2W、6.1Wとなっている。PCIe Gen4対応などのせいなのか、あるいはBIOS設定の見直しで改善するのかもしれないが…?
10nmのSunnyCoveを14nmに移植したRocketlakeだけど、これでシングルスレッド性能はかなり改善しているのは間違いない。11700Kでは、まだZen3に及ばずといったところだが、最大5.3GHzまで上昇する11900Kでは、Zen3を上回る結果になっているようだ。Zen3の登場ででかなり引き離されてしまったシングルスレッド性能で追いつくという最大の目的(?)はある程度達成できているように思う。
シングルスレッド性能はやはりCPU性能の根幹なので、ここでSunnyCoveコアが(11900Kなら)Zen3と「戦える」ことを示したのは意義があるし、今後のWillowCove、GoldenCoveにも期待したい。
ただ、やはり10nm向けのSunnycoveを14nmに持ってこざるを得なかった代償は大きく、それがマルチスレッド性能に表れていると思う。そもそも前世代の最上位からコア数が減ってしまっているし(10コア→8コア)、またそれでも高クロックで回すには消費電力が多すぎてPower Limitありの状況ではクロックが下がらざるを得ず、性能が上がりづらくなってしまい、Ryzen7 5800X(偽)に引き離されてしまうという状況はかなり厳しい。
頼みのシングルスレッド性能も、Zen3と同等程度でしかないので、あえてRyzen7 5800XでなくてRocketlakeを買う理由は、iGPUがついているとか、QSVが使えるとか、あとは入手難易度とかを除けばどうなんだろう、と思ってしまう。
一方で、Rocketlakeは爆熱という噂を散々聞いていたので身構えていたけど、今回使った11700Kに関しては拍子抜けだった。Power Limit(PL1=125W)をかければ、当然おとなしいし、x265エンコードでPower LimitをしなくてもPackage Powerが最大でも200Wなので、たしかにかなり熱いけど簡易水冷なら普通に冷やせる程度。まあ、i9 7980XEとかRyzen9 5950Xとかで遊んできたせいで、自分の感覚がマヒしている感は否めないし、8コアで200Wというのはたしかにすさまじいけど。
まあいわゆる「爆熱100℃突破レビュー」をよく見返すと、11900KでABT使用時だったり、あるいは11700KでもAVX512を駆使するベンチマークとかでヤバくなっている感じ。11900KでPower limitを外してABTを有効にすると高電圧の必要な5.1GHzで全コアぶん回すのでヤバい、という話なのだろうと思う。
そういう意味では、11900KのABTは公式限界OCに限りなく近く、そこまでやって性能をアピールせざるを得ないほど追い詰められている、ということになるのだと思う。11900Kを買ってもその性能を引き出すには相当頑張って冷却する必要がありそうなので、個人的には、11700K(あるいは11700無印とか)で自分の環境に合わせてPower Limitを設定するのが扱いやすいし、値段も抑えられるし、いいんじゃないかと思う。
個人的にはもうSkylake改コアはもういいよという感じだったので、Rocketlakeで逆移植に挑戦してくれただけでも楽しめたし、特にiGPUが第12世代に更新されていることもあって、「最新のQSVに対応した、シングルスレッド性能の向上した開発環境」が新たに入手できたのは大変ありがたかった。これで「QSVEncにTigerlakeの~~という機能を追加してください」とか言われても困らないのだ。
…やっぱりUnlimitedにするとファンがうるさいので、PL1=150Wぐらいで使おうかなあ…
Rocketlakeの注目ポイントは、CPUコアの刷新のほかに、GPUコアの刷新というのもあって、Tigerlakeと同じ第12世代のGPUが載っている。
このQSVがどんなもんかな、というのを次回見てみたい。
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