一方、7月末に私が中国で購入した時も送料等もろもろ含めて結局3万ちょっとで購入していて、国内販売価格よりはだいぶ高くついちゃったんだろうなと思っていたら、そうでもなかったのはびっくりだ。(まあそのころからだいぶ円安が進んだせいかもだけど)
さて、昨日公開したQSVEnc 7.20では、--gop-ref-distオプションを追加して1より大きい値を使えるようになって、AV1の圧縮効率が大きく向上したので、実際どのくらい変わったかをチェックしてみた。
また、31.0.101.3277ドライバでは、エンコードの安定性が大幅に改善していて、HEVCも安定してエンコードできるようになっていた。そこで、HEVCについてもデータを取り直して、比較してみた。
環境
CPU | i9 12900K |
---|
コア数 | 8P+8E / 24T |
L2 Cache | 14MB |
L3 Cache | 30MB |
電圧 | Offset -0.13V~0.00V |
PL1/PL2 | 241W |
tau | 56s |
IccMax | Unlimited |
メモリ | DDR4-3600 2ch |
メモリ容量 | 8GBx4 |
タイミング | 16-19-19-39-1 |
メモリコントローラ | Gear1 |
iGPU | Intel UHD Graphics 770 (32EU) (ドライバ: 31.0.101.3277) |
dGPU | Intel Arc A380 (128EU) (ドライバ: 31.0.101.3277) |
dGPU | NVIDIA Geforce RTX 2070 (ドライバ : 497.29) |
マザー | MSI MAG Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4 |
冷却 | Corsair iCUE H150i RGB PRO (360mm) |
電源 | Seasonic FOCUS PX-750 |
ケース | Themaltake Core V71 |
OS | Windows 11 22000 |
エンコーダ
QSVEncC 6.08
QSVEncC 7.20 (DG2用)
NVEncC 5.43
入力動画
MPEG2 1920x1080 29.97fps 5203frame
AvisynthのLWLibavVideoSourceで読み込み (SWデコード)
使用コマンド
qsv H.264 (-u 1:quality, 4:normal)
--icq <x> -u <1,4>
qsv HEVC (-u 1:quality, 4:normal)
--icq <x> -u <1,4> -c hevc
qsv HEVC 10bit (-u 1:quality, 4:normal)
--icq <x> -u <1,4> -c hevc --profile main10 --output-depth 10
qsv H.264 FF (-u 1:quality, 4:normal)
--icq <x> -u <1,4> --fixed-func
qsv HEVC FF (-u 1:quality, 4:normal)
--icq <x> -u <1,4> --fixed-func -c hevc
qsv HEVC FF 10bit (-u 1:quality, 4:normal)
--icq <x> -u <1,4> --fixed-func -c hevc --profile main10 --output-depth 10
qsv AV1 FF (-u 1:quality, 4:normal)
--icq <x> -u <1,4> --level 5.2 --fixed-func -c av1
qsv AV1 FF 10bit (-u 1:quality, 4:normal)
--icq <x> -u <1,4> --level 5.2 --fixed-func -c av1 --output-depth 10
nvenc H.264
--vbrhq 0 --vbr-quality <x> --preset quality --weightp --bref-mode each --lookahead 32 --level 5.1
nvenc HEVC
--vbrhq 0 --vbr-quality <x> --preset quality --weightp --bref-mode each --lookahead 32 -c hevc --level 6 -b 3
nvenc HEVC 10bit
--vbrhq 0 --vbr-quality <x> --preset quality --weightp --bref-mode each --lookahead 32 -c hevc --level 6 --output-depth 10 -b 3
QSVEnc 7.07 (--gop-ref-distのデフォルト=1) と
QSVEnc 7.20 (--gop-ref-distのデフォルト=4) の比較
まず、--gop-ref-distオプションの効果を見るため、"--gop-ref-dist 1"相当で動いていたQSVEnc 7.07でテストしたこの前のテストでの結果と、デフォルトで"--gop-ref-dist 4"となった7.20での今回の結果を比べてみる。
破線が以前のQSVEnc 7.07、実線が今回のQSVEnc 7.20になっている。
bitrate-ssim
縦軸SSIMが高いほど画質がよく、横軸ビットレートが小さいほど圧縮できているので、左上にいればいるほど良いことになる。
※凡例の □ をクリックすると、グラフ線のオン/オフができます。
※マウスをグラフの 〇 のところにあてると、値が確認できます。
グラフが表示されない場合はこちら。
QSVEnc 7.07(破線)と比べ、7.20(実線)は劇的に画質ー容量比が改善しているのが確認できる。--gop-ref-dist > 1 が可能となった効果はかなり大きいと確認できる。(というかこれまで--gop-ref-distを封印していて申し訳ない…)
他のエンコーダとの比較
次に、他のエンコーダと比較してみる。このグラフでは、Arc A380の結果はすべてQSVEnc 7.20と3277ドライバで取り直している。(そのほかは過去のデータ)
HEVCエンコードが安定して実行できるようになり、データの欠落点がなくなったことでグラフが安定し、きれいなカーブが描けている。
bitrate-ssim
縦軸SSIMが高いほど画質がよく、横軸ビットレートが小さいほど圧縮できているので、左上にいればいるほど良いことになる。
※凡例の □ をクリックすると、グラフ線のオン/オフができます。
※マウスをグラフの 〇 のところにあてると、値が確認できます。
グラフが表示されない場合はこちら。
画質ー容量比のトップは、おおむね12900K HEVC 10bit。ただし、これはFFモードでなく、PGモード(GPU EUを使用するモード)なので、エンコード速度はやや遅い。
一方、低ビットレートではなんとArc A380 AV1 10bitがわずかに上に来ているのはさすがで、高圧縮領域では、AV1が非常に優秀だということが確認できる。一方で、高ビットレートよりではArc A380のHEVC 10bitにも抜かれたりしている点は面白い。
安定して動くようになったArc A380のHEVC 10bitはなかなか優秀。PGモードの12900KのHEVC 10bitよりはやや効率が悪いようだが、Arc A380のHEVCエンコが比較的高速であるのを考慮するとなかなかよいものになっていると思う。
こうしてみるとさすがにRTX2070のNVENCは現状では少しおいていかれている。もちろん、NVIDIAは次世代RTX40xxでエンコーダを刷新し、AV1エンコーダを搭載するとのことなので、この状況がどう変わるか、楽しみだ。
bitrate-fps
今度は縦軸をエンコード速度(fps)にとったもの。
※凡例の □ をクリックすると、グラフ線のオン/オフができます。
※マウスをグラフの 〇 のところにあてると、値が確認できます。
グラフが表示されない場合はこちら。
Arc A380のエンコード速度は総じて非常に高速で、画質-容量比に優れているAV1 10bitで250fps前後、HEVC 10bitでも230fps前後と、かなり速い。
12900K HEVC 10bitのPGモードや、RTX2070のHEVC 10bitと比べてもはるかに高速であることが確認できる。Arc A380のAV1 10bitやHEVC 10bitは12900KのHEVC 10bit PGモード比べると画質-容量比がわずかに下回るが、これだけ速ければ十分なようにも思える。
まとめ
QSVEnc 7.20で--gop-ref-distを1より大きくできるようになり、デフォルトが4になった。この対応で、AV1エンコードの画質―容量比が大幅に改善し、AV1 10bitが、HEVC 10bitに近づくところまで来ていて、かなり効果が大きいと確認できた。
また3277ドライバでは、従来不安定だったHEVCエンコードが安定して動くようになって、非常にうれしい。そして、AlderLakeのiGPUに近い画質ー容量比となっていることがわかった。
加えて、Arc A380のエンコーダはHEVCでもAV1でも比較的画質-容量比に優れるにもかかわらず、さらに高速であることもわかった。
Intel Arcのドライバや今後については、あまり芳しい噂を聞かないし、ゲーム等でGPUとして安定しているのかはよくわからない。ただ、とりあえずエンコードの基本性能は高く、エンコード速度も考慮するとかなり優秀だと思う。
※なお、OpenCLフィルタの安定性はまだチェックできていないので注意。
AV1エンコードはArcシリーズで初の対応だが、初代としてはかなりよいものが搭載されていると思う。
今後、速度についてもちゃんと検証してみようと思う。