OCCT Linpackは十分に凶悪な熱を発生させるけども、AVXありだとまたさらに信じられないぐらい熱くなる。普通のベンチマークとは別次元の発熱になってしまい、必要電圧もかなり高めみたい。
環境
Win7 x64
i7 3770K 4C/8T 4.4GHz @ 1.22~1.24V (CPU-Z)
ASUS P8Z77-MDDR3-2133 16GB 9-11-10-28Noctua NH-D14 +
AS-05OCCT 4.2.0
Cinebench R11.5
CPU-Z64 1.60.1
HWiNFO64 3.95-1620
Ivy Bridgeはオーバークロック時に異様に熱くなると評判。実際にうちもなんか妙にコア温度が高い。
Ivy Bridgeではじめて導入された、22nm + トライゲートについては、
このへんを参考にすると、
・集積度の向上
・リーク電流の削減
・低電圧耐性の向上
あたりが言われている。
実際、IvyBridgeは22nm + トライゲートで集積度を大幅にあげ、Sandyと同等のCPUをより小さな面積に詰め込み、あいたスペースでGPUを強化してなお、全体のサイズを小型化することに成功した。

(
こちらをもとに適当に作った図。)
ところで先ほどの記事には、
Intelの22nmプロセスは、実は高電圧時より低電圧時の方がずっと利点が大きい。同じ電圧なら、1V時にゲートディレイをプレーナ型より18%、0.7V時に37%下げることができる。つまり、低電圧時にも従来より高いクロックでの動作が可能となる。(
後藤弘茂のWeekly海外ニュース - Ivy Bridgeの強化ポイントはGPUアーキテクチャの改革)
とあるので、穿った見方をすれば高電圧時はさほどでもないわけだ。なので、オーバークロックにはやっぱりそれなりの電圧が必要になる。
さて、IvyBridgeはこのCPU Coreから熱が逃げにくいらしく、そのためオーバークロック(して昇圧)するとあっという間に温度が上がってしまい、オーバークロックが難しい。(6コア LGA1366と比べたときに、より急激に熱くなる)
Ivyでコア温度が上がりやすいのはトライゲートのせいだとか、グリスのせいだとか、いろいろ言われているみたいだけど、グリスのせいじゃね?という記事が
こちら。問題の原因を突き止めるってことでは、実に面白い。グリスとはんだだと熱伝導率の桁が違うとのことなので、たとえ薄くともかなり違うようだ。ただ、気になるところとしては、CineBenchでOC耐性を考えるのはやめたほうがいいんじゃないかな…ということ。CineBenchは通ってもOCCT LinPackはおろかx264すら通らないってことがありえそう。
ともかく、先の報告によれば、ヒートスプレッダとダイの間がグリス(ダブルグリスバーガー)なうえに、そのグリスがよくないのか、塗り方が残念なせいか、CPUコアに熱が溜まってしまいやすくなってるようだ。
OCCT Linpack AVX実行中、HWInfoによれば(これがどれほど信頼出来るかはおいとくとして)、

※4.4GHz @ 1.22~1.24V
おそらく、CPU全体で約101W、GPUは使ってないのでほぼゼロ、CPUコアが約81W、ということはL3(LLC)とMemoryIO等その他が約20Wということになる。さっきの図のCPUコア(赤いとこ)の部分に80Wちょいが集中してる、ってことだ。さっきの図をみてくれればわかるけど、Ivyではそこはおもいっきり小さくなってる。そりゃ熱いわ。
(Sandy→Ivyは216mm2→160mm2で、さほど面積が縮小してなさそうだけど、IvyではGPUがでかくなってることを考えれば、CPU部分の面積はわりと減っている)
このとき、温度は

こんな感じで、Core#1がMax88℃…そろそろまずいんじゃね、となる。(このDigitalSensorがどこまで信頼出来るか、というのも気になるが...)
i7 980Xやi7 3960Xなど、TDP130WのCPUがあり、かつそれらをオーバークロックすることができる(TDP=消費電力ではないけど、OCしていればTDPをオーバーして電力を投入していると予想できる)なかで、たかだか100Wで88℃もいってしまうのはちょっとどうなんだろうか? (うちの石が外れだという可能性もあるけどね)
さらに…温度のばらつきがひどくないか? Core#1/#2が冷えなさすぎる。
やっぱり一番熱いところが気になるからね…。
よく言われるのは、シュリンクするとコアの"でき"のばらつきが大きくなってきて、"でき"の悪いコアは熱くなってしまう、って話だ。
もちろん、うちの3770Kが、たまたまこういう子(Core#1/#2だけが熱い)だったのかもしれない。それでも、差が12℃って…これってセンサーの精度とかコアの"でき"とか、それだけじゃないのでは…? 熱密度が増大し、かつ放熱が悪いという中で、熱いのがCore#1,Core#2と真ん中にあるコアだとやはりレイアウトも微妙なんじゃね? と思ってしまう。熱源の間に挟まれた熱源、そりゃ熱いんじゃない?
Sandy-Eみたく、熱源は分散させて、こうしたほうがまんべんなく冷えるんじゃないかな…、と素人的には思ってしまう。

まあ、2コアなどの派生版を作る都合とかもあってそんなに簡単でもないんだろうし、Intel的にはオーバークロックなんて特に考えてないだろうし、どうでもいいってことなんだろうけど。
グリス…Intelさんも妙なコスト削減とかしないで欲しかった。
同じCPUなら速いに越したことはない。電力・放熱量的には現実的なものに収まっていて(排気はそれほど熱くない)、もうちょい上げられそうなのに、コア温度的な限界が早々と来るというのは悲しいものがある。せっかくの"K"なのにねえ。
それに、3770無印などで定格で使うとしても、放熱がしやすければファンの回転数をさらに落とせるのに、もったいない…。
Haswellでは、AVX2が搭載され、またGPUがさらに増強されることで、再びTDP=95Wに戻るといううわさだから、さすがにはんだに戻してくれるんじゃないかな…と期待したい。…GPUよりCPUコア数増やせと…。
とりあえず、オーバークロック耐性とかを探るのはそれなりに楽しかった。とりあえず4.4GHzでは常用できそう。ただ、Ivyの特性を考えると、定格ぐらいでどこまで低電圧化・省電力化できるかのほうが、正しいIvyの使い方な気がする。ということは割りとよく言われているように、3770無印とか3770T/3770Sとかのほうがいいのかもしれない。
ついでにCineBenchの値 = 8.79 (4.4GHz @ 1.22~1.24V)

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この時の温度は、Max71℃ほどで、OCCT Linpack AVXよりは17℃低い。